山を越えるために走り続けること数時間。
太陽がその気配を漂わせはじめ、
朝が近づいて来ている。
流石のケイサツも、木々が無法に生い茂る山の中で
たった一人の少女を見つけて捕らえるのは難しい。
少しずつ光で照らされていく先と足元に
三年前にポルンが履いていた靴を見つけるススー。
思わず立ち止まってしまい、その靴を手にするススー。
背後から何者かが近づく。
プーイ「なんだお前。」
ケイサツかと思って瞬時に振り返るススー。
だが、そのまま後ずさりしながら逃げようとする。
プーイ「お~これは珍しい。女じゃねえか(笑)」
プーイはポルンが着ていた服をきている。だがれは、もう既にボロボロだ。
ススー「あなた誰?」
プーイ「名乗るほどのもんじゃねえよ。おめえこそ何もんだ?」
ニヤニヤしながら近づいて来るプーイ。
ススー「なんでポルンの服を着てるの?」
プーイ「ああ、これか?!
あいつ、ポルンていうのか。へへっ」
ススー「やっぱり知ってるのね!
教えて!
ポルンはどこにいるの?
何をしてるの?
生きてるの?」
プーイ「ん~・・・・」
まだニヤニヤしながらススーを舐め回す様に見つめているプーイ。
プーイ「おめえもあれか?
あのポルンってやつと一緒で逃げてんのか?」
ススー「逃げてないわ!
山を越えた向こうの街に行きたいだけよ!」
プーイ「ポルンってやつを忘れられず追っかけて来たのか?」
ススー「どう考えてくれてもいいわ!
私はもう時間がないの!
ポルンのこと知ってるなら早く教えてよ!」
プーイ「おう。分かったよ。
じゃあ、おめえも疲れてんだろうよ。
俺の根城で少し休んでけ。
そこでポルンってやつのことは話してやるよ。」
ススー「嫌よ。
さっきも言ったでしょ。私時間が無いの。
ポルンがあなたと一緒に居ないのなら、
もうあなたに用は無いわ。さようなら。」
プーイ「あいつは俺の根城に居るよ。
そしてそこは俺とそいつ以外には立ち入れない場所だ。
安心しろ。」
プーイと近づいて来ているはずのケイサツの気配に用心しながら
仕方なくプーイに付いて行くススー。
プーイの根城に向かって木々を抜けると
見渡す限りの広大な平野と巨大な街が見渡せる、
何百メートルをも切り立った崖であった。
ススー「街だ!街だわ!」
プーイ「ああ、そうだ。あれがあんたが目指してきた街だ。」
ススー「やったわ!
私やったわ!
ポルン!どこにいるの?
ポルン!ポルン?」
プーイ「やつはここだ。」
崖の下を指差すプーイ。
プーイ「あいつはこの崖から
街に向かって飛んでったよ。」
ススー「は?嘘でしょ?
こんなとこから飛んだら死んじゃうわ。
たちの悪い冗談よ。
本当はどこい居るの?早く呼んでよ。会いたいわ!」
笑顔で話すススー。
プーイ「だから飛んでったんだよ。
て言うか、俺が突き落としてやったよ。
止せばいいのに、あんまりにもしつこく
あんな街に行きたがるもんだからよ。」
絶句するススー。
プーイ「俺はあの街で産まれ育ったんだ。あの街はほんとつまんねえ街でよ。それで、周りの皆んなも退屈そうにしてるもんだから、若い頃からチョットふざけて悪さしてたらよ、何だかいつの間にか俺を極悪人みたいな扱いするように周りがなりやがって。ほんとクソだあいつら!だからよ、もう流石の俺も我慢の限界で。何とかあの街を変えなきゃならねえからよ。でももうその時は俺はあの街を出るのは決めてたんだけどな。だからその前に、あの街を変えるためにブッ殺してやったんだよ。周りのやつらを片っ端から全部な。俺がご馳走してやるって言ったら、ぞろぞろ集まってきやがってよ、バカ共が。店のやつらも嬉しそうにしてたなあ。でも全部ブッ殺してやった。それからというもの、俺はここらであの街を見下ろしながら居るんだ。」
ススー「ポルンは死んだってこと?」
プーイ「そうだよ。」
怒りに震えるススー。
プーイ「あんな腐った街に行くよりはマシだろ?
俺の話聞いて、おめえもそう思うだろ?
だがおめえは死ななくていいよ。俺とここで一緒に仲良く暮らそうぜ。
もうあいつもいないことだし、どうせ行くとこなんかねえんだろ?
どっかから逃げてここに来たんだろうからよ(笑)」
♠続く♠
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・初回投稿:2018/02/16