[或る用の疎]<14>第2章『由』(了)

神がいてもいなくても、僕らはいつだって時代が作る仮想現実の中の蟻んこだ。
右往左往しながら群れをなし、柔らかい場所を見つけては穴を開けて巣を作ってそこへ目につく物を片っ端から持ち運び入れて積み上げる。そしてそこで子孫増殖を図っては数を増やし、そういった事をし続ける。

神がいてもいなくても、生きる事はなんて単純で社会生活は簡単過ぎるんだ。
それってスイーツ作りにとても似ているらしい。レシピ通りにシッカリ調合して加工すれば必ず官能的な甘味が出来上がる。

だがその作業と甘味の販売が生業になるのかは不確定だから、単純や簡単について勘違いをしてはいけない。なぜなら、勘違いは失望や忘却を生むから勘違いは本当に無為だ。自分だけで官能的な成果に酔いしれたら良いのに。

風の強い海辺に立てば、中空で羽ばたき続けるも止まったままのカモメと見つめあう数秒もある。
そのカモメの遥か上にどこかへ向けて突き進んでいく有機物生成型AIドローンを目で追う数秒もある。
そんな私はその数秒間を使って立ち尽くしていた訳だ。
これからカモメはどこかへ飛び去っていくし、ドローンはそのまま目的に着地して数日で土に還っていく。そして私はYBA(Your Blood Association)に来るたびに子孫増殖の始まりに関わる記憶を積み上げている。

未知予はタスケの『ー1』の詩を読みながらそう考えつつ、流れゆく生殖細胞の経過を観察している。

「これがまた私みたいになるのね。」

でも

「たぶんケーキにはならないわね。」第2章『由』完。

 

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(続く)<15>『辷』(1)


・更新履歴:初稿<2018/01/28>