マヨス「花火がこんな雨の日に打ち上げられているのには理由があるんだ。
楽しいことをして雨の憂さを晴らすために
盛大な花火大会をしてるんでは決してないんだ。」
ハーミ「へぇ。」
マヨス「むしろこの館の平穏さや明るさ、
正しさの様なものとは逆の影の部分を必死に隠すための花火。」
ハーミ「言ってることが難しくて分かんないわ。」
マヨス「そう。
人間は難しいんだ。
ややこしくて自分勝手で残酷で、それでいてロマンティストで・・・。
誰かが誰かの思い通りになんて絶対にならない!
だから人間なんだ!!
そうだろ?!」
ハーミ「余計に分からないわ!」
マヨス「そうか。
じゃあ今から実際に見せてあげるよ。」
そう言うと、館の周りで打ち上がり続ける花火群から離れて森の方へと飛ぶ方向を変える。すると松明を手にした沢山の人達の存在に気付く。
ハーミ「あれは?」
マヨス「海兵達だ。」
ハーミ「どうして海兵さんが山に居るの?」
マヨス「海兵て言ったってアイツらはこの特別管理区域に住む元亡命者達や、
外部からの侵入者を見張るために居るケイサツなんだ。
だから海にしか居ないという訳ではない。
ヤツラの追跡はエグい。
見つかったら必ず捕まって一貫の終わりだ。」
ハーミ「終わり、って・・・
どうなるの?」
マヨス「消されるんだ。
何の違和感も無く消えてしまう。
アイツらがどうしてやって完璧に消すのかは知らないけど。」
ハーミ「ころされるの?」
マヨス「分からない。
館の皆なからすると、朝起きたらフッと居なくなってるんだ。
前からここに居なかったみたいに。
スゲー気持ちが悪い。
だけど、それが自然に行われるのがこの館の処刑だ。」
ハーミ「やだ・・・・」
ハーミは思わずマヨスの腕から手を離して両手で口元を覆う。
そのまま地上に向けて落下するハーミを体ごと両手で受け止めるマヨス。
マヨス「手は絶対に離すなって言っただろ。
もう離すんじゃないぞ!」
お姫様だっこをされた状態のハーミはとても照れ臭いて赤面。
ハーミ「う、うん。
ごめんなさい。
ありがとう。」
マヨスは態勢を切り返してハーミを抱え込む様にして森へと更に進む。
マヨス「おう。
じゃあこの花火の理由を見せてやる。
こっちだ。」
森の中を広く点在する様に動いていた松明の集団がある一点を目がけて集まる様に移動し始めていくのが見える。そしてその松明の灯りの列は山を越えた先の街へと向けて蛇行しながらも連なり進んでいる。
ハーミ「獲物を見つけた蟻の群れみたいだわ。」
マヨス「あの人・・・
もう見つかってしまったのか??」
ハーミ「今警察が追っている人の事を知ってるの?」
マヨス「うん。俺の、いわゆるご先祖様だ。」
♠続く♠
・初回投稿:2018/02/15