目新しい真新しい旧い古い洋館の出来事<6>

● 地下へ伸びる階段 ●

〈招待客達はリビングで朝食を頂いた後、
それぞれのタイミングで各々の部屋へと戻り、
ビーチへと向かう準備にかかる。
ハーミとミルユュもその流れの中で部屋へと戻る。〉

ミルユュ
館の中を少しお散歩してから私達は戻らない?

ハーミ
いいけど。ビーチへ行く準備が遅れないようにしてよ。

ミルユュ
まあ!ママみたいなこと言っちゃって。私は大丈夫よ!


【今回の登場人物】
・ハーミ:20歳。女子大生です。
・ミルユュ:20歳。私の親友。女子大生。建築の勉強をしている女子大生よ。
・マヨス:20歳。ツンデレ系の美少年。ずれた言動で、周りから浮いた存在。


〈そしてハーミとミルユュは真っすぐには部屋へ戻らずに、
まだ見たことのない館の中を巡る。
流石に古くて威厳を醸す絵画や調度品が随所に置かれている。
ハーミはそれらの一つ一つをじっくり観ていきたかったが、
ミルユュがキョロキョロと何かを探すようにしてドンドン
進んでいくものだから、ハーミは渋々と
ミルユュの背中に付いて行くばかりだ。〉

ハーミ
もうそろそろ私達の部屋へ戻りましょう?
もうだいぶん歩いたけど、この館廻り尽くす気なの?

ミルユュ
もう少し、もう少しだけ歩こう?

〈少しとは言うミルユュだが、
これまでにもうだいぶん歩き回っているからか、
表情と語気にいつもの元気は乏しい。
そしてミルユュに半ば強引に手を引かれて
廊下の途中の角を左に曲がった時。〉

ミルユュ
・・・・ココ!

〈そう言ってミルユュが指さした先には
重鈍な金属で出来た柵の扉。〉

ハーミ
えっ!?何々?

〈柵の向こう側を覗き込むと、
日光も灯りも届いていない暗闇の中には
階下へと伸びている階段。〉

ミルユュ
ここは1階だから・・・・この下は地下よね?

ハーミ
ええ。きっとそうよ。

ガタガタ、ガシャンがシャン

〈扉を縦に横に前に後ろに動かすミルユュ。〉

ミルユュ
開かなーーーっい!
嫌だーーーー入りたーーーい!!

ハーミ
よしましょう・・・。
もう本当にお散歩は疲れちゃったし。
きっと鍵がかかっているわよその柵には。

ミルユュ
でも

ハーミ
でもじゃない!
ビーチにも遅れそうだし、
もう流石に部屋に戻るわよ!

〈今度は私がミルユュの手を引っ張る。
いやいやしながらハーミに手を引かれるのを拒むミルユュ。〉

ハーミ
そんなに入りたいのなら、
後ででも管理人さんにお願いしたらいいのよ。

ミルユュ
そうね!さすがハーミ!そうするわ。
じゃあ早く着替えてビーチへ戻りましょう(笑)

● 昼、浜辺にて ●

〈ビーチで思い思いに初夏の海を楽しんでいる招待客達。〉

マヨス
やあ!

〈昨夜のBBQを色んな意味で盛り上げてくれていた少年・マヨスが現れた。〉

マヨス
夜はよく眠れたかい?

ミルユュ
そんなことはどうでもいいのよ!管理人さんはどこ?

マヨス
え?どうして?

〈ミルユュの勢いに気おされた表情のマヨス。〉

ミルユュ
あなたには関係ないわ。

マヨス
他人に質問しといてその言い方はないだろう。

ミルユュ
管理人さんにお願いしたいことがあるの!
でもビーチではずっと見かけなくて。

マヨス
そうだねえ。
確かにまだ彼はここへは来てないみたいだ。

ミルユュ
管理人さん来ないのかなあ・・・
でもそれじゃあ困るの!今どこにいるの!?
あなた達ってすごく仲良しみたいだから
知ってるでしょ、きっと。
ねえねえ!だから教えて!!

〈マヨスの左腕を掴み、噛み付かんばかりに詰め寄るミルユュ。〉

ハーミ
ちょっとミルユュ。そんな一気にまくしたてても、
彼困ってるみたいよ。ねえ?

マヨス
そんなんじゃないけど!なんなんだこいつ。

〈ミルユュの手を振りほどくマヨス。〉

ハーミ
くすっ

マヨス
なんだよ!

ハーミ
あなたでも戸惑うことがあるのね。

マヨス
ほんとお前らうるさい!
管理人さんは探してくるから大人しく
ここで遊んで待ってな、オジョーチャン方!

〈館へ向かうマヨス。〉

ハーミ
私はハーミよ。そしてこの子がミルユュ。あなた名前は?

マヨス
あぁ。俺はマヨスだよ!じゃあまた後でな。

ミルユュ
マヨス・・・

ハーミ
また後でね。

ミルユュ
ちゃんと探してきてねー、マヨス!

〈波打ち際に寄せては返すさざ波と追いかけっこをしたり、
ビーチサッカーをしている人達に声援を送ったり、
貝殻探しを楽しんだハーミとミルユュは
大きなビーチパラソルの下で一息つく。〉

ハーミ
マヨス、帰ってくるの遅いわね。

ミルユュ
ホントだわ!調子良いばっかりでガッカリ!

ハーミ
何言ってんの。
あなたが諦めちゃマヨスが可哀そうよ。
あの子は絶対に悪い子ではないんだから、
信じてあげましょ。

ミルユュ
そうね。でも私もう眠くて。

ハーミ
じゃあいい時間になったら私が起こしてあげるから
お昼寝をしていたらいいわ。
起きた時には良い知らせが舞込んでいるわよ。

ミルユュ
ん~

〈もうミルユュは寝ぼけ始めている。〉

ハーミ
お休み、ミルユュ。

ミルユュ
おやすみぃ・・・・・・・・・・・・・・・・。
またあのひとにあいにちかしつへいきたい・・・・・・・

ハーミ
?!今・・・・?!あの人・・・地下室・・・

〈ミルユュの寝顔を見ながら私はつぶやく。〉

ハーミ
「また・・あの人・・に・・会いに・・
地下室へ・・行き・・たい」?
あの地下室には誰かがいるの!?
一体どういう事かしら?
ミルユュは私に何かを隠している。
何?何のこと?

〈ミルユュを今すぐ叩き起こして
真相を確かめたい気持ちだが、
寝付いてすぐに起こすのは申し訳ないからそうはしないが、
昨夜ミルユュがベットを離れてトイレに籠っていたことと、
ハーミが見たあの光とが関係していそうで・・・
戸惑いもハーミにはあった。〉

マヨス
なんだよ。寝ちゃってんのかよ。

ハーミ
マヨス!そ、そうなのよ。

〈戻ってきたマヨスに、ミルユュが発した寝言について
話をしたくって堪らないハーミ。〉

ハーミ
(そうだ!地下室の鍵のこと!)

マヨス
鍵なら彼は持っていないよ

ハーミ
え?

マヨス
誰も持っていないんだよ。僕以外には。地下室の鍵わね

ハーミ
え?ええ??

マヨス
君には。ハーミには全てを話さないとな。

ハーミ
私に?全て、って何のこと?

〈マヨスが、これまでの印象とは違って、
大人びている上に切実な表情でハーミを見ている。〉

マヨス
この館のことと僕のことを君には話すよ。

ハーミ
え・・ええ・・。
でも急にそんな私と関係のない事を話されても、
私どうしたらいいいのか。

マヨス
確かに。
ついさっきまでは君には関係のない話だったけど。
君に助けて欲しいんだ!
僕と・・・、僕とこの館の過去を。

ハーミ
??

マヨス
君なら必ず助けてくれる。
ホントにいきなり勝手な考えですまないと思っている。
でもどうか、まずは僕がこれまでひた隠しにしてきた
この話を聞いてやくれないかい?お願いだ!この通り!

〈教会で神に祈るかのようにして、
溢れんばかりの感情でうるんだ瞳で
ハーミを強く見つめるマヨス。〉

ハーミ
分かった。
とりあえず話だけは聞くわ。
でも、その先に私があなたの助けになれるかどうかは
今は何とも言えない。

マヨス
ありがとう。

〈ミルユュが寝入ってしまっているのを確認するかの様に、
ミルユュへ一度視線を送ってから、マヨスはその話を始めた。〉

♠続く♠


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・初回投稿:2018/01/19