ヨシハチは変声期<1>

下らなさを垂れ流すのが止まらない、そんな音の連なりがロックミュージックなのであるらしい。

きっと否定の凶器で攻められながら受ける傷は想像上のもので、生傷はどこにも出来ていないのに、どうしてロックミュージシャンはあんなに憐れみの風貌で人前に現れるのだろうか。

それから。いつまでも苦しい表情で痛々しさを擦り付け合ったりするのもロックミュージシャンの本性なのだろうか?

「知らねーよ。」

ある意味では俺もロッカーなのかもしれないな。

いや、どちらかと言うと俺はPUNKISHなほうかな。

例えどちらだとしても、何故か俺は、自らの心中や周りの人間達との話をやたらと披露するミュージシャン達は嫌いだ。

しかも其奴ら一味が登場する時には須く、聞き手として対峙しているだけなはずのインタビュアーは敢えて其奴らをアーティストって連呼したがるもので。
其奴らがアーティストと呼ばれているのを聞かされている、もしくは読まされている側のこっちとしては最悪の気分になるばかりだよな、カモン!

そもそもアーティストの基準はどこでどいつが決めているのだ?アートなのか塵なのかの違いは作品のどこに仕込まれているんだ?

「分からん。」

俺は勉強がまだまだ足りないのか。
勉強してきたから俺は分からなくなってきたのか。
そういった理解出来ない事から湧き出す不思議は無尽蔵だが、その不思議さが気になって気になって仕方の無い俺ではない。

とりあえず俺にとって世界は不気味で、いつまでたっても知らない事ばかりなんだが、そんな俺はどうしたら良いの?

真実の99.99999…%を取りこぼしたまま生きていくのが正義だと思い始めてもいるんだけどね。
だって、下らなさが詰まったアートで満ち溢れた世界に存在する悪なんて、ゲームの中の敵と同じだろ?
その根を手繰った末に取り出せるのは人間そのものなんだろ?

「ああ。」

俺は君谷義羽馳(きみたによしはち)。

陸の孤島にあるパピルニーに収監されてから10年が経つ。

パピルニーには極悪でどう更生しようも無いとされた罪人が収容されており、死ぬまでここに居るのか、死ぬまでの途中で引っ張り出されて死刑執行を受けるかの2パターンのみだ。

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