綺麗じゃない花もあるのよ(#16)

寒い?ここも寒い、どこも寒い、そうだろ?
(常識だよ、そんなの、冬なんだよ冬。)

 

金持ちになりたかったら詐欺師になれよ
(金なんか好きになれるかよ。)

 

有名人になりたかったら残虐な犯罪者になりなよ
(賞賛をくれる相手に対してありがとーって応えるのは間違ってるからな。)

 

犯すような気持ちで抱くのと犯すのとは実際には同じだろうが!
(だが俺は犯罪に手は出せない。)

 

ならば、あなたがどんどん閉じられていくでしょう?
(まだまだ遠いと思わずに、車は思うよりも早い。)

 

なぜ生まれてきてしまったんだろうねえ
(茶殻に湧く虫とか。)

 

名前とそれは君の唯一自分の意思ではないところじゃないか
(シャワーを浴びる時に、便器に付着した汚れにもお湯のシャワーを当てて流すのが簡単で良いよ。)

 

進一はヴォルールの外壁に貼ってある子供神輿と祭縁日の日程が書かれた自治会のポスターを見つめながら歩道に立っているが、大気の冷えで固められてしまいそうな後頭部を建物側に向け変えてから、今度はポスターに背中を付けては寄っ掛かった形で立ち続ける。

そして弾けた主神からの攻撃に対しては、襲って来る都度で身を屈めて首を前に倒して応える。

 

あたたかいのは、あの女の中だけだったのか?
(時に、相手をセックスで受け入れるという事は、その相手の腕に出来た吹出物を受け入れるという事なのかもしれない。)

 

抱き合う隙間から出てくるいつもの虫は、残虐な黒き生い物?
(だとすればもし、相手が特に美しくはない容姿だとしても、目につく嫌なところがなければ、俺は相手の何を受け入れるのだろう。)

 

その心はどんな音楽を鳴らすんだ!
(「自分の誤魔化し方を教えてくれる音楽や映画」ばかり耳につく自分に死ねばいいのにと嘘ぶいてばっかりだよ。)

 

 

サイレンを回しながらも無音の状態で近づいてくるパトカーの軽自動車に乗った2人組の警官達に一瞥を喰らわされた進一。

 

今度は尻を浅く預けた体勢で歩道の白いガードレールに腰掛け、レシートとか割引券やポイントカードの端々が飛び出したクラブハウスサンドみたいな茶色の折畳財布を両手で掴み締め、取れるはずのない暖を掌で取ろうとする。

主神との争に気を取られている内にも進一の口からは呼吸に合わせて蒸気が流れ出て、喉元よりももっと奥に蓄えている水分や体温と、血液に溶かし込まれた魂とを徐々に徐々にこの町の大気から吸い取られていく様だ。

 

寒いとか温かいとか。

寒いとか温かいとか。

寒いとか温かいとか。

俺の今はどうなりたいんだよ。

寒いとか温かいとか。

寒いとか温かいとか。

寒いとか温かいとか。

 

⇒第17話へはココをタップ★